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よろずなことを呟いたり書いてみたり
2025/08/18  [PR]
 

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人外受けものの、書きたかった部分だけ。










・少女と吸血鬼
とっぷりと肥えた白い月を見ると、少女は笑い出さずにいられなかった。

ああ、またこの時がやってくると。存在や名だけは誇大すぎるほどのものを持っているくせに、臆病で脆弱な誘拐者、もとい現在の少女を占める者がやってくるのだと思うと自然に口元が緩んでしまった。石畳の床に響くブーツの音が近付いて、いよいよ声を上げそうになる。何にも変わらないのに、求めようと(いやそれすらしない)するのですか。臆病で脆弱で間抜けな誘拐者。手を出してもいいのですよ。部屋の入り口で、闇夜に溶けたマントが翻る。城の最上階まで上がって来たと言うのに、息一つ乱したりしない。そればかりか淡く色付いた唇は押し黙るだけ。青白い相貌が少女を捉えていた。

「こんばんは、誘拐者さん」

「…そんな名前ではありませんよ」

「じゃあ吸血鬼さん、こんばんは。お散歩ですか」
わかっているのにそんな口を叩いてしまうのは、この誘拐者――吸血鬼と少しでも会話をしていたいからだと、少女は考えている。この城に連れて来られてから会話をしているのは、目前の吸血鬼だけであった。毎晩毎白々しいほどの光源を示す月が見えてから、彼は(外見や教えてくれた情報
ではそうである)少女の元へやって来るのだ。吸血行為を働くでもない、襲うでもない、ただ少女の好奇心からの問いに穏やかに答えるだけである。もしかすると、私のようにお話したいだけなのかもしれない。楽観的な思考だけは素晴らしい少女は、そう思った。だからそこ不条理に誘拐されても恐怖と言うものは一向に感じないのだ。そう、淋しかったのですね、たまには、女の子ともお話したいのですよね。
「そんな俗物的な考え、わたしは思ったこともありません」
吸血鬼の彼は、自分のことを「わたし」と言った。温厚な紳士然とした伸びやかな気品を持った声で発音する「わたし」。少女には届かない低さと冷たさを持つ音色を、声帯ごと持っている。
「ねえねえ吸血鬼さん、他の子はどうなのですか」
「他の子、とは」
「私以外に誘拐してきた女の子たちです。こっちばかり構っていたら、きっと拗ねちゃうわ」
「……彼女たちですか、別にそのようなことはないです。寧ろわたしが顔を見せると怒鳴ってくる。凶暴です。あの年頃の娘は」
「どうやって怒鳴るの」
「どうもこうも『早くここから出せ』の一辺倒ですよ。一人は『お前なんて死ね』とも。ああ、恐ろしい、凶暴な娘たちだ。あまりに無神経だ。……」
彼は近くのカウチに座ると溜息を吐いた。漆黒のマントが揺れるのを、とても美しいと思う。吸血鬼は美しい形をしていた。青白い肌に切れ長の翠眼がまるで硬玉のように煌いている。項垂れる様が柳のように細い。きっと涙を流したら、宝石が零れるんだわ。空想を振りかざして、少女は吸血鬼に歩み寄る。そうして耳元で言ってやるのだと、歩幅を確かにしながら。
「大丈夫、私がいます。そのためにいればいいのでしょう?」


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・三人の少年とあともう一人
「はーい一番ニュース!すごいよ俺知っちゃったああ!」
「また妄想の話?」
「いーよ別に。どうせ五組の倉山さんが何カップとかの話だろ」
「え、倉山さん?あの人な、魅惑のF…ってその話じゃねーの!」
「違うのか」
「ちーがーいーまーすー。重大ニュースだっての、コホンコホン」
「わざとらしい咳払いしないで、一体何がニュースなんだい」
「じゃあ言うぞ。……『少女連続誘拐事件』ってあんじゃん、最近」
「うん」
「隣の女子高で被害者続出なんだっけ、それ」
「そう、被害者は全員女子高生。多分犯人は生粋の変態だな、うん」
「おめーに言われたかねえよ。で、何なんだって話だよ?」
「急かすな急かすな。それで、最近誘拐されたのが村長のお孫さん。二人とも知ってるっけ」
「女子高の生徒会長さんだよね。何度かうちの高校にも来た」
「そうそう。黒髪ロングヘアでちょっと好みだったけどさ、そのお孫さんが誘拐される直前に話しているやつを見たって、もしかしたらそいつが犯人なんじゃないかって話」
「…どういうことだ」
「もっと詳しく」
「おれ、一昨日風邪ひいて遅刻しただろ。午前中医者行ったんだけど、その時警察の人が来てたんだよ」
「何で医者のところに警察が来るんだろうね」
「わかんねーけど、片っ端から話し聴いてるって感じだった。ちょっと聞き耳立ててお伺いしてたら、医者がぽろっと言ったんだ。『そう言えば村長のお孫さんでしたら、この辺では見ない人とお話してるのを見ました』って。時間とか聞かれて、そしたら誘拐推定時刻?っていうのか?…ちょうどぴったりだった」
「……その『この辺では見ない人』についての特徴とか、話してなかったの」
「勿論警察につっこまれてた。うろ覚えですがって前置きで話したのが、……燕尾服を着た白髪の初老の男…って言ったら、わかるかな」
「そいつって…、」
「そう、村外れにある古城に出るって言う噂の幽霊。幽霊じゃなくて、どうやら生きている人間だったっぽい」
「怪しさからいったら犯人でも可笑しくはないね」
「だろー?あんな古びたお城に住めるわけないとは思うんだけどさあ、噂じゃなくて真実だったわけじゃん。存在自体は」
「そうだね。でもそれだけで一連の犯人と決め付けるのはどうかと思うよ」
「え、今さっき可笑しくはないとか言ったのに!でも十分ニュースだろっ」
「うん。………急に黙ってどうしたの。僕とこいつだけで会話を進めちゃったよ」
「あ、忘れてた。お前いきなり黙るなよーキャラじゃねえの」
「……俺たちで、その古城に行ってみないか」
「え?」
「嘘、マジで言ってんの」
「何かわかるかもしれねーしさ、どうなんだ二人とも」
「どうする?」
「正直、おれたち三人だけだと危険な香りもします隊長!」
「当てがあるんだ。…今日は晴れてるから温室にいんのか、あいつ」
「ど、どこ行くんだよ。つか、あいつって、」
「あいつはあいつだ。俺は大っ嫌いなんだけどな、三人で不安なら四人で行けばいい」
「おい待てって。その…『あいつ』さんって、生徒だよね」
「ああ。自称名探偵のな」





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少女と吸血鬼
>涙を流したら宝石が~って幽白かよと思いました(打ちながら)。
吸血鬼のイメージは何となく「品の良い金田一」。

三人の少年ともう一人
>一応、
・事件の内容を話しているお調子者系の人(一人称「おれ」)
・つっこみつつ比較的真面目口調の人(一人称「僕」)
・茶化しつつ粗暴で乱暴な口調の人(一人称「俺」)
で、三人です。名前とか全然決めていないので…。


たぶん続かない。
 

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